17.平塚柔道物語・その17
柔道からレスリングへ大野中出身の神大生・金子貴宏
平塚市の大野中学校柔道部からレスリングに進出したすごい男がいる。
彼は現在、神奈川大学2年生、金子貴宏19歳である。
レスリングの実力は日本のJOC(ジュニアオリンピックカップ)第3位である。
身長178cm、体重74kg、来年春のJOC大会で優勝を狙っている一人で、
優勝すれば世界選手権大会に日本代表で出場となる。その目標に向った彼の情熱が、私にもひしひしと伝わってくる。
彼は伊勢原にある向上高校にレスリング特待生で入学した。向上高校は県下でも3本の指に入るレスリングの強い高校である。
彼の成績は、高校1年で個人戦66kg級で第4位。2年生では県大会で個人戦優勝。団体戦でも優勝。
共に関東・全国大会に出場。さらに3年生になると、JOCで全国大会の決勝まで行ってしまった。
決勝の相手は群馬県代表の松本選手であった。最初のピリオドのうち1ピリオドを取り勝てると思ったが、
そのあと2ピリオドを取られて惜しくも2位となった。
だが、その実績を認められて、神奈川大学にも推薦で入学できたのである。
ところで、なぜ彼は柔道からレスリングに転向したのか。
その理由を金子選手に大野中学校の柔道部の思い出と共に語ってもらった。
彼は中学の3年間は必死で柔道の練習に挑戦したという。
彼の得意な寝技に、立ち技のつよい選手もよく苦しめられたという。
しかし、同級生の坂崎や山崎のように目に見えた活躍はなく、県16位が限界であった。
当時の大野中学校教師であった真田州二郎は金子の寝技を見て、常に背中をつかない戦いぶりと、
半端でない彼の心の粘り強さを見過ごさなかったのである。それはレスリングの素晴らしい素質であった。
真田は3年前に総合格闘技でアマチュアの日本レスリングチャンピオンと戦った経験があり、
レスリングとは何かを彼なりにつかんでいたのである。
真田は彼に向上高校への進学をすすめ、中学3年生の終わり頃には、
向上高校のレスリング部の練習に参加させるようにした。
彼は現在、レスリングは自分の性にあっていると心から思っており、
その素質を見抜いてくれた恩人真田先生に心から感謝している。
また、柔道部の3年間は、大変意義があったという。
その一つは、レスリングの練習の厳しさを感じなかったのは厳しい柔道の練習に耐えてきたお陰である。
二つ目は、試合に負けた時「再度相手と対戦したら君はどう戦うのか」と真田教師からいつも考えさせられたことだ。
これらがすべてレスリングを続けて行く上での大きな糧となったという。
大事なポイントと感謝を忘れない人間はまだまだ伸びる。金子貴宏君の今後の活躍に期待したい。
全日本学生選手権大会(2007年8月24日)右が金子選手
(HIRATUKA 市民ジャーナル 連載記事より抜粋)
|